インタビュー Vol.2
医療人として「患者さん・ご家族を援助する」こと、働く環境として「志を合わせ、ご自身の人生のイニシアチブをご自身で握っていける」こと周友会はそうありたいと考えております。
インタビュー
M3.com 【山口】コロナ禍でも業績好調、新病院での新規事業でさらなる地域貢献を‐高山成吉・徳山病院理事長に聞くー Vol.2
慢性期の患者が病棟の大半を占め、病床稼働率が70%以下だった医療法人周友会徳山病院(山口県周南市)。崖っぷちの状況から、わずか3年で病床稼働率100%にまで引き上げたのが2014年2月に理事長に就任した高山成吉氏だ。革新的な経営手腕により、見事に病院再生を実現した軌跡をインタビューした。(2021年8月20日オンラインインタビュー、計2回掲載の2回目)
――数々の改革を実現させ、病院の経営難を脱した後の成果について教えてください。
理事長就任前から徐々に院内の改革をはじめていたので、2014年2月に正式に理事長となる頃には、医業収益と経常利益に明るい兆しが見え始めていました。2013年度から2015年度にかけての3年で増収益(経常利益)が各年プラス1億2000万円。その後も順調に右肩上がりを続け、2020年度には医業利益が10億円を超えました。病床稼働率も2013年度の64.1%から、2015年度には94.9%に大幅アップ。直近5年は、平均病床稼働率が93.0%となっています。2020年10月には建物の老朽化に伴い、新病院を移転・新設しました。
――新病院の特色は。
旧病院に比べて3倍の広さとなった新病院は、5階建てで、4階までが病院、5階がサービス付き高齢者向け住宅「さくら」です。新規事業として「訪問看護ステーション サルビア」「訪問介護ステーション オリーブ」も立ち上げ、介護保険事業の強化を図りました。病院の病床数は78床と変わりませんが、移転を機に療養病棟をなくし、全て地域包括ケア病棟を中心とする体制に切り替えています。
さらに、理事長就任当初に私一人で始めた医療機関や介護施設への「飛び込み営業」を、現在は院長や副院長、事務長、ときには看護師長、訪問看護師までもがチームとなって定期的に続けてくれています。こうした血の通ったコミュニケーションから、「徳山病院にかかりたい」という患者さまが増えていますし、新規の病院や診療所からの問い合わせも増加しています。数年前までは想像もつかなかった地域連携のパイプが、今さらに太くなっていると実感しています。
――コロナ禍で経営に影響はありましたか。
いいえ、むしろ業績は伸びています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を受け入れている近隣の中核病院では、院内での「密」を防ぐために病床数を確保できずに医療のキャパシティーが減ってしまっている状況です。当院ではそこで対応しきれないCOVID-19感染者以外の患者さまを地域包括ケア病棟で受け入れ、長期入院させずに地域にお返ししています。病床稼働率はここ数カ月高稼働が続いています。今後、感染が落ち着いた後には、COVID-19後遺症などの回復に対して機能する病院としての対応をしていかなければならないと考えています。
――最後に、徳山病院の今後の展開についてお聞かせください。
2021年10月、院内で企業主導型の保育事業を開始します。当院に勤務する140人の職員のうち9割は女性スタッフです。妊娠や出産を控えている者や育児中のスタッフが多くいるなかで、職員の復職を考えると病院の近くに保育施設がないことはとても気がかりでした。念願叶って開設する企業主導型保育所「あい保育園®徳山病院店」には、当院の職員の子どもたちはもちろん近隣に住む方のお子さまも通園が可能です。万が一体調不良となっても病院内に保育園があるので、ご家族は安心してお子さまを預けることができるのではないかと考えています。待機児童の解消の一助となることで、地域に貢献できることもうれしいですね。
さらに12月には、院内にフィットネスジムをオープンする予定です。当院では企業健診と一般健診を合わせて年間2800人の方が健診を受診されます。メタボリックシンドロームなどの生活習慣病と診断された場合、「運動してください」と言っても患者さまが実際にどんな運動をしているかを把握することができません。そのため、「データとして取る方法、場所はないか」と以前から模索していました。そこで考えついたのが、病院とフィットネスジムのコラボレーションです。24時間年中無休のフィットネスクラブ「ANYTIME FITNESS」を運営する株式会社Fast FitnessJapanに構想をプレゼンテーションしたところ、私たちの意図、目的をすぐにご理解いただけました。夢がまた一つ実現しようとしています。
健診率向上のために周南市が取り組んでいるヘルスケアプログラム「スマートライフチャレンジ」をここで実施することで、地域におけるフィットネスジムの利用率も相乗的に引き上げられると考えています。最初は健診結果の該当者がメインターゲットになりますが、ゆくゆくは健康増進目的の一般の方や高齢者の筋力トレーニングなどにも活用されることを期待しています。これからも地域に開かれた病院として、地域と共生する病院づくりを目指していきます。